岩場を勢いよく飛びまわっていた。
目の前に岩が迫る。
ぶつかるかと思いきや、要領よく踵を返し上空へ昇った。
自在に飛びまわることを身体が知っているようだ。
再び、飛沫のあがる岩をめがけて下降する。
岩と岩の隙間に海面が見えた。
「そんな狭い所へは入れない」
その時、透明の玉であることに気づいた。
自分は、飛びまわることを知っている透明の玉なのだ。
「いけるかも……」
みごとに岩間を通り抜け、海中へ飛び込む。
ゆっくり沈む身を浮遊力にまかせ、
それから……、それから……、
海面にプカプカ浮かび、夕陽に染まる海を眺めていた。
飛びまわった体感。
それは、知らない感覚じゃない。
自由な、自在な感覚。
身体は知ってる、そんな体感だった。