2004-12-24

「幻燈」という灯り



その灯りは、突如、現れ、
あの日、浮遊する小さな玉であるわたしを引き寄せた。

ふと入り込んだ空間に浮かぶ小さな球。
「こんばんは」
音のない言葉を発する玉に、球はサインを返すように、ふわり応えた。
「こんばんは」

球の名は「Q」。
「io」の記号の玉と「Q」との出会い。

身をくねらせて欲情する女印の妄想船、
嗅覚の冴えない鈍瞎漢の暴走船、
型にはめて訝る鈍げな船、
雑多な船が行きかう宇宙で。

互いが玉と球なら、 相手の素性などどうでもよい。
我らは浮遊する「たま」でしかないのだから。

約束を交わすこともなく、玉と球は幾夜も再会を果たし、
いつしか、記号を外してすら互いを認識するようになる。

今宵、球は玉のもとへやってくる。
サンタのようにやってくる。
二つの「たま」は、何に変わるだろう。
変わることなど何もない。 
我らは浮遊する「たま」でしかないのだから。

ネットの宙に浮かんだ「幻燈」は、 二つの「たま」を引き寄せ、
この日に繋がる道を照らしていたのだ。